映画「海獣の子供」の感想
映画「海獣の子供」を観ました。
公開:2019年
上映時間:111分
作者:五十嵐大介
制作:STUDIO 4℃
映像表現はすごかったです。
ただ話はわかりにくかったです。
少女がジュゴンに育てられた少年に出会い、海の「誕生祭」に参加する話。
Wikipediaを確認すると、漫画連載開始時にストーリーが決まっていなかったらしい。
「少女がジュゴンに育てられた少年に出会う」、「最終的に海と宇宙をつながるようなものにする」以外の要素はノープラン。
やはりね、たしかにそんな感じだった。
だからこそ、感じ取ろうとする姿勢が観る側に求められる作品。
以下のようなメタファーだと思う。
誕生祭=生命の誕生や出産。
海=子宮。
ジュゴンに育てられた少年たち=卵子。だから彼らは長く生きられない。
隕石=精子。
浜辺に打ち上げられて死んでいた深海魚たち=生理。
さらに「宇宙が人や海に似ている」という要素が加わる。
映画の最後の海のカニが、主人公の初潮の隠喩。であると他の解説とかを見てなるほどなと思いました。
精子の象徴である隕石を、主人公の少女が持っているのが、やや分かりづらいポイントだと思う。常識に囚われないという意味ではよいかも。
漫画を書くときに、女性を想定読者としているらしい。なるほどな。
ただ、そういうメタファーなどが分かっても面白いかどうかとは別だし、(映像表現はすごいのだけれど)物語の展開も単調だった。
具体的には「脇役が意味深なことを言う→『祭りが始まる、ゲストはどうこう』と言う→主人公たちが海で泳ぐ」という展開の繰り返しばかり。
状況や場所は変わるが、本質的な展開が単調だったのではないか。
それに、主人公に味方をする脇役が、揃いも揃って、意味深なことばかり言う。
意味深なことを言う係は、だれかに集約しても良かったかもしれない。むずかしいか。
気になった点はいくつかあった。
ビールやアルコールをたくさん飲んでいるはずの主人公の母親がモデル体型な点。腹に贅肉がある方が自然だと思う。
主人公が自転車で車道の右側を走る点。日本なら車道の左側を走行して欲しい。
水族館の船が都合よく動いた点。キーはあったのか?
主人公の母親の声優について。イントネーションが不自然で、最初は母国が海外の方だと思いました。
少年が海外で発見されたという話が直前でされていたので、主人公の母親もフィリピン系の人かなってミスリードしてしまった。
単純に蒼井優さんが上手くなかっただけで、勘違いでした。
ジュゴンに育てられた少年の髪の毛が長かったり短かったりする点も気になったけれど、上記のように卵子の隠喩だとふまえると、遺伝的特徴の違いということか。
言い方を変えれば、見立てやメタファーのために、現実味というか説得力がやや損なわれたかな。いやー、でも仕方のない必要コストか。